卯月ユウトの読書日記

読んだ本を記録する、読書好きの交流の場です。

自分を変えたい二人の物語 -「言葉のいらないラブソング」河邉徹 著

目次

はじめに

皆さんこんにちは、卯月ユウトです。

今回取り上げるのは河邉徹さんの「言葉のいらないラブソング」です。

この本には、書店でなんとなく良い本ないかな〜と思いながら見て回っていた時に出会いました。読書が好きで、音楽が好きな私に読めと言わんばかりのタイトルでしたので、思わず購入した次第です。

 

感想

普通すぎることに悩むミュージシャン・アキと、普通に憧れるアパレル会社のプレス・莉子の正反対の二人の視点で描かれるラブストーリーでした。

二人は正反対であることに自覚的で、互いに影響を与えながら徐々に変わっていきその中で衝突やすれ違いが生まれるようになっていきます。

やがて二人は前向きに『別れ』を選択するのですが、そこに至るまでの心理描写やシーンがどこかに実際にいる人を描いたほどに解像度が高くて。男女の出会いから別れを描いた物語として、大ヒットした映画『花束みたいな恋をした』をみた時の感覚を思い出しました(二人の出会いのきっかけや惹かれた理由は全く違うけれど)。

こういった何気ない日常を切り取ったような物語は個人的に好みだと改めて感じました。もちろん、奇想天外なあり得ない物語も面白いですけどね。

 

アキと莉子の二人の気持ちの描写が丁寧で良いのはもちろんですが、二人の周りにいる人々のキャラクターや言葉も良かったと思います。

例えば、アキの親友でありサポートメンバーでもある裕介やマネージャーの美智子、莉子が通うバーのマスターの真紀子といった人たち。アキと莉子が変わっていく際、お互いが大きなキーとなっているのはもちろんですが、彼らの言葉や行動によっても大きく変わっていったのだろうと思います。

サブ的な登場人物ではありますが、彼らをしっかり描くことで二人の物語がより締まったものになっていると感じました。

 

また、著者自身がWEAVERというバンド(2023年に解散)でドラマーとして活動していたからか、美智子など事務所やレコード会社の関係者とのシーンがリアルだと感じました。特に、CDの売り上げやライブのチケットの売れ行きについて悩む描写は、ミュージシャンとしての経験があってこそ描けるものだと思います。

この本の最後の方に「言葉のいらないラブソング」の歌詞が出てきますが、できることなら実際に曲として聴いてみたいなとも思いました(叶わないだろうけれど)。

 

さいごに

ここまで、河邉徹さんの「言葉のいらないラブソング」の感想を書いてきました。

非常に読みやすく素敵な物語で、あまり本を読んでこなかったような方にもお勧めできる一冊です。気になった方はぜひ下のリンクからチェックしてみてください。

それでは、また。