目次
はじめに
皆さんこんにちは、卯月ユウトです。
今回は佐藤正午さんの直木賞受賞作「月の満ち欠け」について書いていきたいと思います。
感想
先にも書いた通り、佐藤正午さんはこの作品で第157回直木三十五賞を受賞、2022年には大泉洋さんはじめ豪華キャストで映画化もされました。
この物語では、瑠璃という登場人物が何世代にも渡って生まれ変わりをします。登場人物が多く尚且つ複雑に絡み合っている上、時系列順では描かれていないため注意して読まないとかなり混乱します。
一番のキーとなる(生まれ変わりの起点となる)最初のルリ・正木瑠璃と三角哲彦の二人のシーンは特に非常に美しくて良かったです(不倫だけどね……という思いもありつつ)。
瑠璃の夫・正木竜之介は彼女に対して「僕がきみを外へ連れ出してやる」「僕なら、るりさんを救い出せると思う」と求婚をしたのですが結果的には彼女を束縛するようになり、その生活に悩んだ彼女は三角に「連れ出す」「救い出す」ことを求めたのではないかなと。
そういう気持ちはわからなくはないけれども、そこから生まれ変わってまで会いたいと思うのはもはや執念・怨念の域に達しているように思え、少し恐怖さえ覚えました。
詳細は伏せますが、ラストで明かされるルリ以外のもう一つの生まれ変わりには正直驚かされました。
巻末に参考文献としてイアン・スティーヴンソン 著/笠原敏雄 訳の『前世を記憶する子どもたち』などが記されています。それらの文献を読んでみると、またこの作品も深く味わえるかもしれません。
ちなみに私が読んだ文庫版、タイトルに“岩波文庫的”とついています。これは、岩波文庫が古典を主に収録するレーベルで、『月の満ち欠け』は収録するには新しすぎるためだそうです。
老舗出版社がこのようなパロディーを自ら行うというのは非常に異例のことです。岩波書店からの初の直木賞を受賞作ということで、出版社としても特別な作品であることの表れなのかもしれないですね。
さいごに
ここまで、佐藤正午さんの「月の満ち欠け」の感想を書いてきました。
私は先にも書いた通り映画を観ていたのでストーリーがある程度きちんと入ってきましたが、初めてこの作品に触れる方が読むとおそらくさらに混乱するのではないかな、と思います。ぜひ相関図等を書きながら読むことをお勧めします。
映画の方はDVD、Blu-ray化もされていますし、各種配信サービスでも視聴が可能です。
それでは、また。
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