目次
はじめに
皆さんこんにちは、卯月ユウトです。
今回私が読んだ作品は、山本文緒さんの「自転しながら公転する」です。この作品は第16回中央公論文芸賞と第27回島清恋愛文学賞を受賞し、2021年の本屋大賞にもノミネートされ、松本穂香さん主演でドラマ化もされた人気作品です。
感想
この本の特徴というとブログ記事のタイトルにも書いた通り、どこにでもいる普通の人の物語であるということです。
更年期障害を患った母の看病のため実家に戻ってきた主人公の都は、アウトレットモールのアパレルの契約社員として働きながら寿司職人の貫一と付き合い始めます。しかし、彼との結婚は見えず、職場はセクハラがあり母の具合も一進一退。「正社員になるべきなのか?」「運命の人は他にいるのか?」などと思い悩みながら進んでいく物語です。
このような悩みは、実際に生活している中でも直面し得るものだと思います。だからこそ、特に都(32歳)と同じくらい世代の人は「これは私のことだ」と自分と重ねながら読むことができ、その結果として人気の作品になったのではないでしょうか?
都がぐるぐると思考する様子はまさに『自転しながら公転する』という感じで、すごく秀逸なタイトルだなと思いますし、そこの感情の起伏の描き方も非常に良かったです。
藤田香織さんの解説によると、後から追加されたプロローグ・エピローグについてはどうやら賛否両論あるようですが、私は「賛」の立場です。この加筆が仕掛けとなり、物語を楽しむ上での良いエッセンスになっていると思います。これから読もうと思っている方には、ぜひきちんと初めから順に読んでほしいです。
600ページ超えとかなりの文量はありますが、読後感は「え?そんなにあった?」となるくらいで、物語にしっかりと入り込めました。
優しく読みやすい文章で紡がれているにも関わらず、人の狡猾さや脆さ、本質的な部分を描きこんでおり、さまざまな方に読んでいただきたい名作だと感じました。
さいごに
ここまで「自転しながら公転する」の感想を書いてきました。
山本さんの著書を読むのは今作が初めてでしたが、とても良かったので他の小説作品やエッセイなどをぜひ読んでみたいなと思っています。
なお、山本さんは2021年に膵臓がんのため58歳の若さで亡くなられているとのことで、こんなに良い作品を書いた方の新作をもう読むことができないのは寂しいなとも感じます(遺して下さった作品を大事に読みたいですね)。
それでは、また。
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