目次
はじめに
今回取り上げる作品は、元乃木坂46のメンバーの高山一実さんの『トラペジウム』です。
この作品は高山さんの初めての長編小説で、累計30万部を突破し5月10日には劇場アニメが公開され人気の作品です。
それでは、感想に移っていきたいと思います。
(作品の結末に触れる部分があります)
感想
『トラペジウム』は、女子高生の主人公・東ゆうが自らに
- SNSはやらない
- 学校では目立たない
- 彼氏は作らない
- 東西南北の美少女を仲間にする
という四箇条を課しアイドルを目指す物語です。
事前に知っていた情報としては「アイドルを目指す高校生の物語」だけだったので、てっきりオーディションを受けて仲間と切磋琢磨してというような感じだと思っていたので、自分で仲間を見つけ着実にアイドルを目指すというシナリオは新しく面白いなと感じました。
読んでいく中で東の自己中心的な思考が気になりました。自分のアイドルになりたいという夢に、華鳥、くるみ、美嘉の3人を巻き込んで邁進していくのですが、その過程で東が仲間の気持ちになかなか気づかないシーンが多々ありました。
もし本当にアイドルになれたとして、4人のグループ(東西南北)の活動は長くは続かないだろうなと予想していました。
決定的だったのは事務所・マルサクトの遠藤との会話の中での、
「アイドルになりたくない女の子なんているんですか?」
という台詞。ここを読んだ時に私は、ああ、こういう「自分がこうだからみんな同じはずだ」という考えになってしまうのって、若さゆえの青さだよなと感じました。
また、遠藤がアイドルについて
「残念だけどそんなに美しい世界じゃない。(後略)」
と言ったことや、華鳥の
「(前略)そもそもアイドルって楽しくないわ。」
というセリフが私の中でかなり印象に残っているのですが、この作品で書きたかったのはここなのかもなと私は思うのです。キラキラしたアイドルの世界に憧れ自らもアイドルを経験した高山さんだからこそ、その裏に隠れている苦悩を描きたかったのではないかと。
ちなみに4人のグループ・東西南北は、遠藤との会話のシーンのあとわずか20ページほどで急転直下の解散に至るのですが、それらの描写がかなり駆け足になっていたことが少し残念に思います。突っ走って失敗してしまった後の東の変化や、アイドルとしての活動についてもう少し膨らませても読み応えがあって良かったのではないかなと。
もしかすると、高山さんは芸能界というのはそれほどあっけない世界なんだと書きたかったのかもしれませんが。
今回『トラペジウム』を読みこのブログを書くにあたって初めに触れたアニメ映画のレビューもチェックしたりしたのですが、そちらではデビュー後に尺が割かれているようです。ぜひ私も映画の方も見てみようかなと思います。
最後にもう一つ触れたいシーンが、くるみの通う西テクノ高専の工業祭での一幕。コピーバンド・コドモオオトカゲのボーカルの名前が清水、演奏した曲は『ヒロイン』『ハイスクールガール』『恋』……。
明らかにback numberではないか!
とback numberファンである私は本筋とは関係ないこの描写が気になってしまって。触れざるを得ないよなと笑
さいごに
ここまで高山一実さんの『トラペジウム』の感想を書いてきました。
難しい表現もなく読みやすいので、普段読書をしないという方にも勧められます。
初の長編小説ということで荒削りで細部の気になる点はあったものの、全体的には楽しく読め、面白かったので良かったです。高山さんはこの作品以降は小説を書かれていないようですが、もし今後書かれることがあるならぜひ読んでみたいです。
それでは、また。
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