卯月ユウトの読書日記

読んだ本を記録する、読書好きの交流の場です。

事実と真実は違う -「流浪の月」凪良ゆう 著

目次

はじめに

皆さんこんにちは、卯月ユウトです。

今回は、2020年の本屋大賞受賞作で2022年に広瀬すずさん、松坂桃李さん主演で映画化された凪良ゆうさんの代表作『流浪の月』の感想を書いていきたいと思います。

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感想

この小説のテーマは『事実と真実は違う』ということです。物語はファミレスでの第三者視点から始まり、章によって語り手が変わっていく(=視点が変わる)ことでそれを描いています。

題材になっているのは、当時19歳の青年・文(ふみ)が小学四年生の更紗を家に連れ帰った誘拐事件です。世間の人々からすれば更紗は被害者で、文は加害者。更紗に対して周りの人々は優しさを向けるのですが、更紗の視点の章を読み進めていくとその優しさが彼女を苦しめていることに気づきます。

 

それに気づいた後からは、更紗の周りの人たちの気遣いに読み手である私も「何もわかってないくせに」と思ってしまいました。

しかし、私の実生活の中でもそういうことはあったのではないだろうか?良かれと思って他人に普通を押し付けてはいないだろうか、それが誰かを傷つける刃となってはいないだろうかと自分のこれまでを顧みさせられました。

 

とはいえ……。更紗に対しては「なぜここで反論しない?」と苛立ちを覚えるシーンも多々。「そうじゃないんだ!」と真実を打ち明けていれば、更紗も文もそして周りの人々ももっと苦しまずに過ごせたんじゃないか、と。でもそれは実際には難しいのだろうな、明かされたとしても信じられないんだろうな、とも思う。そういう人々の感情や世論のリアルを描いているのも、この作品の良いところだと感じました。

二人の真実を理解している梨花という存在に少し救われた気持ちにもなりました。

 

それにしても、更紗の恋人の亮くんについては過剰に描きすぎではないだろうか……。DVのリアルってこういう感じなのだろうか……。

 

更紗と文がこのあとどう過ごしていったのか、続編で読んでみたいなという気持ちもあります……。凪良さん、ぜひ書いてください!

 

 

さいごに

ここまで、凪良ゆうさんの『流浪の月』の感想を書いてきました。

一つの出来事についてさまざまな視点で重層的に描いた読み応えのある作品でした。映画もぜひ観てみたいなと思います。

それでは、また。