目次
はじめに
皆さんこんにちは、卯月ユウトです。
今回取り上げる作品は、選考委員長・金原ひとみさんによる「文藝 × monogatary.comコラボ賞」から生まれた短編集『New me』です。
七篇の短編が収録されているのですが、今回は前半の三篇の感想もとい軽い解説を書いていきたいと思います。
感想
白山通り炎上の件/有手窓 著
YOASOBIの楽曲『New me』の原作となっている小説です。
納得いかなくても、周りに合わせていないとその場に居づらくなってしまう。そんな人間関係の悩みは、大なり小なり皆が持っているものかもしれません。
この物語の主人公・多々良のぞみは、自分の身を置く環境を変えることが世界を変えるきっかけとなりました。のぞみのようにガラッと変えるのは難しいでしょうが、環境を変えるというのは非常に大事だろうなと思いました。
ちなみに、かなりハードボイルドな展開となっています。
サイボーグになりたいパパゲーノ/東旺伶旺 著
パパゲーノとは『死にたい気持ちを抱えながら、その人なりの理由や考え方で“死ぬ以外”の選択をしている人』のことです。どこかでこの言葉を聞いたことがあるな……と思ったのですが、伊藤沙莉さん主演のこちらのドラマでした。
かなり記憶は薄れていますが、良いドラマだったのは間違いないのでぜひ皆さんも観てみてください。
この短編は、コンプレックスから発作的に「死にたい」という気持ちが湧き上がる主人公が、同窓会で再開した同級生の抱える不安を共有したことで変わっていく物語です。『パパゲーノの杖』と呼ばれるノートに記された数々の人の体験談が、非常に印象的でした。
『パパゲーノ効果』という自殺を踏みとどまった人の体験談が自殺を抑止するという仮説、実証されてほしいし広まってほしいものです。
放浪する顔面/佐加島テトラ 著
宇宙飛行士の主人公の山田ナオミは、太陽系外に初めて人類を送り込むプロジェクトに招集される。予定期間は30年、乗組員は1人⁉︎
ナオミはそのミッションの途中に軌道変更、生命維持装置で冬眠(いわゆるコールドスリープ)をし、500年の時を経て復活します。そこに広がっていたのは顔も性別も自由に変えられる世界で……。
『美』という移ろう観点についてうまくまとめられていて、楽しんで読むことができました。たどり着いた結末には、私もなるほどなと思いました。他者の評価を気にしてしまう、劣等感がある、自信が持てないという人に読んで欲しい作品です。
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さいごに
ここまで、『New me ー文藝 × monogatary.com 小説集』の前半三篇の感想を書いてきました。
短編ではありますがかなり内容の濃い物語たちでした……。残りの四篇に関してはまた後日記事にしたいと思います。
それでは、また。