目次
はじめに
皆さんこんにちは、卯月ユウトです。
今回は累計100万部を突破したヒット作品、辻村深月さんの『傲慢と善良』の感想を書いていきたいと思います(今更感があるほどに売れている……)。
同作は9月27日に藤ヶ谷大輔さんと奈緒さんの主演の実写映画が公開されました。
感想
この物語は、主人公の西澤架(かける)の婚約者である坂庭真実が突如として消息をたち、架が真実を探す中で彼女の過去や嘘に直面していくストーリーです。
(※以下ネタバレを含みますので注意してください)
前半は架の目線で進んでいきます。架は東京育ちで女友達が多く恋愛経験も豊富だけれど結婚願望はない。そこでは結婚相手を選べる側の人の傲慢さを強く感じました。
二人は婚活アプリで知り合った(双方結婚を前提に出会いを求めているはず)にもかかわらず架は結婚はまだ先のことだと、結果的に一年半以上が経過。架の女友達(美奈子、梓)はそこを指摘し次々に責めます。加えて、その場には真美のことまで悪く言っていて嫌なやつだなと思いました。
その後、本来オフレコであるはずのこの時の会話を真実に吹き込んだり、面と向かって悪口を言ったりというシーンが出てきて心底嫌いに……。
読み手の私からすると、架はなんでこんな人たちを信用して友達として会っているんだろうと思ってしまうのですが、それはきっと架が純粋で鈍感で善良だからなのだろうと読み進めるうちに感じ取れました。
一方の真実は学校も就職も両親の言うとおりにしてきた良い子=善良として最初は描かれています。しかし自分で何も選んでこなかったことで決断できない、自己評価は低いのに自己愛は強いという傲慢さが浮き彫りになっていきます。
誰もが持っている善良さと傲慢さを解像度高く描いていて、私自身のことも書かれているのではないか……と感じました。
先日、映画も鑑賞しました。原作からはかなり改変されていましたが、人の傲慢さと善良さという作品全体のテーマは上手く描いていると感じられました。
個人的には、この作品に初めて触れる方は映画から入り、その後で感情の細かいところまでより詳しく描かれた原作を読まれることをオススメします。
さいごに
ここまで、辻村深月さんの『傲慢と善良』の感想を書いてきました。
人の本質を見事に描いた作品で非常に面白かったです。また、巻末の朝井リョウさん文庫解説もすごく良く、ぜひ本編を読み終わった後に読むと良いでしょう。作品の味わいが一味も二味も変わってきます。
私が好きで観ている『あの本、読みました?』というテレビ番組でも文庫解説の特集がありましたが、文庫化作品を読むときの楽しみの一つだよなと改めて思わされました。
それでは、また。
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