目次
はじめに
皆さんこんにちは、卯月ユウトです。
今回取り上げる作品は、2021年の本屋大賞3位となった伊吹有喜さんの『犬がいた季節』です。今年(2024年)の5月に文庫化されて以来、書店でよく見かけて気になっていた作品ですが、ようやく読むことができました。
感想
物語は一匹の迷い犬が八稜高校(通称・八高)で引き取られるところから始まります。コーシローと名付けられた白い犬が、生徒たちと心を通わせながら過ごした12年間(昭和63年〜平成12年)が描かれています。
実は、この物語は伊吹さんの母校である四日市高校で、昭和49年〜昭和60年に飼われていた迷い犬に着想を得て書かれているのです。伊吹さんはこの作品を書くにあたり、四日市高校の後輩に取材をしたそうです。
三重の自然豊かな情景の描写や、進路や恋愛などの生徒たちの悩み・心情がよく伝わってくるのは、伊吹さん自身が過ごした経験と後輩の生の声を参考にしているからなのだろうなと思います。
私は愛知県に住んでいるのですが、小さい頃には鈴鹿サーキットなどに遊びにいったことがあったり、日々のニュースで触れることの多い地名が出てきたりと、すごく身近に感じられました。
高校が舞台なので、生徒たちは3年間で巣立っていきます。作品ではコーシローの目線で生徒が学校から去っていくのを見送るシーンがあるのですが、そこがなんとも切ないです。
「元気でね、コーシロー」
(お別れなんですね・・・・・・)
元気でね、という言葉を聞くと、長いお別れが来る。
実際に話すことはできないかもしれないけれど、多くの家庭の犬たちもこうして人の言葉の意味をなんとなく理解しているのかな、なんて想像をしました。
また、作中には音楽も効果的に盛り込まれています。第1話「めぐる潮の音」では氷室京介さんのアルバム『FLOWERS for ALGERNON』、第4話「スカーレットの夏」ではスピッツの『スカーレット』、第5話「永遠にする方法」ではGLAYの『HOWEVER』という具合に。
私はそれぞれの曲やアルバムを知っていたので、どの話も音楽を頭の中で流しながら、時代背景と照らし合わせながら楽しめました。音楽を聴きながら聖地巡礼してみるのも面白いかな、とも考えています。
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さいごに
ここまで、伊吹有喜さんの『犬がいた季節』の感想を書いてきました。
高校生たちとコーシローの交流を描いた心温まる作品でした。様々な人にお勧めしたいですが、三重県に在住・出身の方にはぜひ読んでいただきたいです。
それでは、また。
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